小阪 清行先生の講演会を聴いて
3月10日(土)アイパル香川に於いて、四国学院大学など4大学でドイツ語の非常勤講師をしておられる小阪 清行先生の講演会があり、聴講してきました。
テーマは「日独戦争と第九 - 映画『バルトの楽園』の背景など -」、この映画は昨年夏に全国公開されたもので、会員の多数の方々も観られたことと思います。
第一次世界大戦によって、俘虜(捕虜)となったドイツ兵約4700名が戦場のチンタオ(青島)から日本に移送、そのうち四国へは、松山、徳島、丸亀の 各収容所に合わせて約1000名が送られてきました。後に、この映画の背景となる徳島県鳴門の板東俘虜収容所1カ所に集められ、約3年近くここでドイツ兵 俘虜たちは過ごす事になります。
映画はこの間のドイツ兵俘虜たちと日本の軍人、特に主演の松平健扮する板東収容所所長、松江豊壽との交流関係を中心にストーリーが展開します。
先生は、「チンタオ・ドイツ兵俘虜研究会」において、永年ドイツ兵俘虜の実態等について研究されて来られた関係で、映画制作担当者からも支援を要請さ れるなど、ドイツ兵俘虜に関しては既に権威者であったわけです。
ですから、私たち聴講者は昨年観た映画の場面を思い浮かべながら、物語の背景や映画と史実とのズレについても、十分理解できたと思います。また俘虜た ちの周辺で起こった事件やエピソードを交えながら、面白おかしく説明があり、例えば主題のひとつである、ベートーベン「第九」の初演奏の舞台は講堂(映画 では野外)であったことや当時の合唱者・聴衆の実情、その他諸々の経緯などについても、その実態がよくわかりました。
最後に、先生の講演の中からわかったことですが、坂東俘虜収容所にいたドイツ兵俘虜の中から、近代日本の文化や技術の発展に深く寄与したドイツ人を多 く輩出したことは感銘深いものでした。
西川 欽也