Fastnacht ストーリー (若者の会奮闘記)

今年のファストナハトの内容を企画し準備した若者の会の苦心は仮装に尽きた。それはいかにあの不気味な雰囲気を演出するか、であった。特に仮装のお面の鼻の立体感、やはりあの存在感を放つ鼻を立体にしなければならない。しかしそれは容易なことではないのではないか、との暗雲が晴れぬまま平成28年2月20日の当日を迎えた。衣装はいろいろと準備したものの成功の鍵はお面担当たる高橋圭輔さんのクラフトマンシップに委ねられていた。

夕闇迫る冬の午後、森山雅子さんが黒い森のさくらんぼケーキを私がドイツ風揚げパンを手配し、ホテルの会場も食事も整った。私はどこか慢心があり、ろくに練習できていないギター演奏を安請け合いし、結果的に当日の朝まで準備に追われた。「まぁ、アンプのリバーブ(残響効果)を強めに効かせればそれなりにムーディーな演奏をできるだろう」との皮算用もないわけではなかった。

19時の開会時間に合わせて、若者の会による仮装集団が40数名の香川日独協会会員の前を行進した。皆さん、少しきょとんとしたような目で、しかしその視線は確かにお面の立体的な鼻に存分に注がれていた(ように思う)。これは高橋君を中心に若者の会のメンバーが開会の直前まで集まって工作作業にあたったその賜物であった。開会、多田野会長のご挨拶に続き乾杯があり、その後、理事からファストナハトについての解説があった。女性が男性のネクタイをハサミでカットする風習もあり、祭りの中にも政治というか、権力という世俗的な要素が含まれているところが面白い伝統行事である。

余興として披露したギター演奏。プレイにミスは少なかった。しかし、アンプのエフェクトを強くかけ過ぎ、音の輪郭がぼやけた。弾きながら、これはリバーブがこってりと効き過ぎてはいないかとの感覚があった。次回(があればだが)道具に頼らずに、ただシンプルに良いギタープレイをしてみたい、そんな反省の残響が耳にこだまする夜だった。

というわけで、私自身は揚げパンの手配と余興の準備とで手一杯で、実は当日のイベント最中の記憶が薄い。しかし、どうであろう、なにか満足げな表情を浮かべた仮装集団の写真の様子は。これだけで私は、ああ、うまくいって良かったな、心からそう思う。

香川日独協会若者の会
乃村 敏行