事後報告 イザローンを振り返る8 「夏休み」

暑い日が続いておりますが、お元気ですか?サッカードイツチームが3位になり、元気を取り戻したような気分です。
Nummer8をお送りいたします。
「夏休み」に入る前に、小学校の4年生は「卒業」という節目を迎えます。6年制の小学校もあるようですが、私が通った小学校は4年制でした。
4年生の子供達は、真っ白の無地のTシャツを持って校内を駆け回っていました。Tシャツに皆のサインをもらっていくのです。教室では、いつもの朝食の時間を延長し、皆で過ごす最後の日を大切にしていました。彼らとは、3ヶ月少々共に過ごしただけでしたが、街や教会で会った時は、「最近、ドイツ語はどう?」とか、「授業の時、騒いで先生を困らせてごめんね。」と、声をかけてくれました。
さて、子供達は、夏休みをどのように過ごすのだろうか、本当に宿題はないの?? 宿題は本当にないそうでびっくりしましたが、「夏休み明けには、習ったことをよみがえらせる復習の時間がかなり必要なのよね。」と言っている先生もいました。
母国がドイツでない子供達は、車で何時間もかけて家族で里帰りをしたり、数週間サマースクールのような集団活動に参加したり、夏休みの前半と後半の2回旅行に出かけたりするようです。プールや湖などへ泳ぎに行くと、プールサイドの芝生や砂浜で読書をしたり、音楽を聴いたり、りんごをかじったり、のんびりした時間が流れていきます。「休暇」というのは、彼らにとって、本当に体に負担をかけず、ゆっくり休む、という意味合いが強いのだと思いました。仕事をする時にはする、休む時には休む、という切り替えの上手さは、パーティーではとことん盛り上がる、しかし、勉強の時には真剣に勉強するドイツの大学の学生達を思い出させます。
長澤 あい

事後報告 イザローンを振り返る7 「剣は友を呼ぶ」

日々、暑くなっておりますがお元気ですか?
Nummer7をお送りいたします。
ある日、私に1本の電話がかかってきました。ギムナジウムに通う男の子からで、剣道を一緒にしましょう、という内容でした。私達はインターネットや知り合いを通じて剣道クラブを探し出し、イザローンの隣町のメンデンという町へ通うことにしました。大学時代に留学していたヴィースバーデンでも、このような調子で話が進み、週3回練習に通っていました。
「地域のスポーツクラブ」としての「剣道クラブ」であるため、小学生からおじいさんまで、様々な顔ぶれです。チャンバラごっこに影響された子供達、サムライ映画に興味を持ち長年続けている年配の方々、また、世界大会へ向けて苦しい練習をする若者達。。。
さて、ヴィースバーデンの時と同様、私がしなければならなかったことは、「剣道」について机に向かって勉強することでした。トレーニングとしての剣道は小さい頃からやってきましたが、きちんとした歴史や概念に関する剣道にはほとんど触れることがなく、ドイツの剣道家達からの様々な質問に答えられず、しばしば恥ずかしい思いをしました。
小さい時には心と体を鍛えるための厳しい剣道でしたが、ドイツでのトレーニングを通して、「剣道」の本質を勉強しながら楽しむものへと変わってきました。小さい時に学んだ技は体で覚えており、体が自動的に動きますが、それに加えて、その技の機能を詳しく分析することを、今回、メンデンでの練習でドイツ人の先生に教えてもらい、「なるほど」と今になって感心させられました。本来ならば日本人の私が教えなければならないのでしょうが。。。
最後に、日本から送ってもらった2本の竹刀をどうしようか考えた結果、1本はホストマザーに「身を守る」ためのお守りとして、もう1本は小さい頃剣道を習いたかったのに、危険だからという理由で習わせてもらえなかったという知り合いの人にプレゼントしました。(ちなみに、その人は今年、剣道を始めたそうです。)
長澤 あい

事後報告 イザローンを振り返る6 「スポーツを楽しむ」

Nummer6をお送りいたします。
イザローン滞在中は、幾つかのスポーツ活動に参加しました。ドイツは「地域スポーツ」が主流で、学校での部活動等はなく、子供からお年寄りまで地域のスポーツクラブに所属し、スポーツを楽しむようです。私がドイツと出会ったのは、ドイツのの「地域スポーツ」について視察する為の「日独スポーツ少年団同時交流」に参加したのが始まりでした。
今回は、「女性のための運動教室」、「ハプキ道」、「剣道」に毎週通いました。
「女性のための運動教室」は知り合いの人に誘われて参加するようになりました。金曜日の夜8時から10時まで、2時間ほど、ストレッチ、筋力トレーニングを通しての体力づくりで、一週間の締めくくりに一汗かいて爽やかな気分になりました。ギムナジウムの生徒をはじめ、主婦、おばあさんまで、合わせて約15名で毎回にぎやかにトレーニングをしました。
時々、気晴らしにチャレンジした「腰振りダンス」は専門の先生の手ほどきを受け、アラビアの音楽に合わせて踊りました。また、ギムナジウムの女の子達が「バトントワリング」を教えてくれ、目が舞うほどバトンを回しました。私が紹介した「剣道」では、普段のストレス解消にいいねーと言って、大きな声で「メン」と叫んでくれました。また、メンバーの中で幼稚園の保母さんが教えてくれた「マッサージ」は、大好評でトレーニングの後に心と体を癒してくれました。このマッサージ法は実際に幼稚園でも取り入れているそうです。
女性のための盛りだくさんの運動教室でした。次回は、「ハプキ道」、「剣道」です。
長澤 あい

事後報告 イザローンを振り返る5 「老人会に紛れ込む」

Nummer5をお送りいたします。
私は、イザローンで過ごした9ヶ月間、ある老人会の集まりにほぼ毎回参加させてもらいました。2週間に1度のペースで、地域の教区内(同じ教会へ通う人達)で開かれています。きっかけは、私のガストムッター(ホストマザー)がその老人会の世話係として活躍しており、私を連れて行ってくれたのが始まりで、いつの間にか私もその一員のように紛れ込んでいました。初めて訪れた時は、90歳のおばあちゃんのお誕生日を祝う、との事、早速、鶴を何十匹か折り、プレゼントしました。
集会が近づくと、ガストムッター達と一緒に、ケーキを焼いたり、テーブルに飾る花を摘んできて生けたり、クリスマスの時には、クリスマスの飾りを半日かけて作りました。お年を召されていても、みんなケーキを2切れは簡単に食べてしまうので、人数分x2個と計算して、ケーキがいくついるか考えます。
ゲーム、本の読み聞かせ、夏祭り、遠足、体操など、プログラムは様々です。その中で「日本」についても紹介させてもらいました。ちょうど9月だったこと、また、色々な歌を聞かせた結果、ガストムッターが一番気に入った「もみじ」の歌を10日間くらい毎晩練習(特訓)してみんなの前で披露しました。(ちなみに別の老人ホームでは二人で「富士の山」を歌いました。)
この老人会では、参加している方々が生きてきた時代のこと、イザローンのこと、ドイツのことなど、色々なことを教えてもらいました。ありがとうの感謝の気持ちと、長生きしてねという願いをこめて。
長澤 あい

事後報告 イザローンを振り返る4 「君はやっとドイツ語を話したね」

Nummer4をお送りいたします。
月曜日。小学校の1年B組の教室。朝のあいさつが終わると、週末に何をしたか一人ずつ発表していきます。今までずっとドイツ語が話せず、先生の質問にうなずくだけしていた子が、「Ich habe mit meiner Schwester gespielt.妹と遊んだよ。」と言いました。その時、向かい側の席の子が「Du hast endlich Deutsch gesprochen!! 君はやっとドイツ語を話したね。」と喜んだ光景が今でもしっかり頭の中に焼きついています。それぞれのクラスには、母国がドイツでない子供たちが実にたくさんいます。そのため、子供たちのドイツ語のレベルも様々で、職員室ではこのことに関する話題が中心でもあります。入学前には、母国語のレベルを調べることによって、ドイツ語の上達度を予測するシステムを導入したり、授業中には先生自身が外国語を使って説明したり、取り出し授業によって個人指導をするなど、母国語がドイツ語でない子供達を踏まえての授業対策が色々な形でとられています。家の家族とは母国語、学校ではドイツ語、といった何とも器用に言葉を使いこなす子供達ですが、子供なりに苦労もしているのだろうか、、、校庭で元気に遊んでいる彼らを見て疑問に思うことがしばしばありました。日本語を話せるのが当たり前の日本人の中で学校生活を送ってきた私にとっては驚くほかない光景でした。また、言葉だけではなく、宗教も様々で、給食のときのソーセージも宗教によって違ったものが用意されていました。
小学校という小さな集団ですが、この中で様々な母国語、文化、生活習慣をもつ子供達が共に勉強し、遊び、助け合って生活しています。ここでは「競争」ではなく「共存」ということが大切なのだと思いました。
長澤 あい